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投げる(投げ込み式)消火器とは…

消火具の種類消火器と言えば、本体容器が赤い噴射式の消火器を連想される方が多いかと思われますが、最近は片手で扱えるエアゾール式簡易消火具や、火元に向かって投げるだけの投げ込み式消火器(消火具)なども増えているようです。

そこで気になるのが、これら製品の消火能力や扱いやすさです。

住宅火災が発生したときは、いかに初期消火できるかが重要だと言われていますが、近年、注目されている投げるタイプの消火器は、いざという時に本当に役立つのか・・・!?

ここでは、投げ込み式消火器の特徴について、少し整理してまとめておきましょう。




コレだけは押える!投げる消火器の基礎知識

本体容器に消火薬剤を圧入した噴射式消火器には、主に次のようなデメリットが挙げられます。
  • 消火器本体が重く、力の弱い高齢者や子供が火元まで運ぶのが難しい…
  • 手順が簡単とはいえ、パニック状態になると操作にもたつき、消火活動が遅れてしまうおそれがある…
住宅火災に限らず、火元は小さいうちに消す初期消火が何よりも重要ですが、その初期消火にもっとも威力を発揮する消火器の扱いにもたついていては、火はどんどん燃え広がってしまいます。

※ 初期消火とは、火がまだ天井まで燃え広がっていない状態の火事のこと

そこで、高齢者をはじめとした体の不自由な方や、女性、子供のような災害弱者でも簡単に扱えるようにと開発された製品が投げる消火器です。
投げ込み式消火器の仕組み
サット119エコ現在、投げるタイプの消火器は、(株)ボネックスの『サット119エコ』をはじめ、(株)ファイテックの『ファイテック』や、(株)ヱビス科学研究所の『プロントケール』などが販売されていますが、いずれの製品も、その消火の仕組みは、ほぼ同じようなものと考えられます。

参考までに『サット119エコ』の消火の仕組みについてまとめておきましょう。
消火の仕組み:『サット119エコ』
火元に投げ入れられた衝撃で、ボトル容器内の液体(消火液)が拡散
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消火液の水分蒸発作用により、燃焼物を冷却
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消火液に含まれるリン酸アンモニウムと主要消火剤によって
発生するアンモニアガスが燃焼の連鎖反応を中和し抑制すると同時に
重炭酸アンモニウムと火災の熱によって反応した炭酸ガスが燃焼面への酸素を遮断
※ 延焼物の発火点を上げて燃えにくくする硫酸アンモニウム作用により、再燃防止効果もある
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燃焼物を消火!
使用方法
投げ込み式消火器の使用方法投げる消火器は使い方も簡単で、消火液の入った容器をそのまま火元に向かって投げつけるだけです(火元に向かって投げ入れられた容器は、ぶつかった衝撃で本体が破裂し、消火液が拡散します)。

なお、『サット119エコ』などの製品は、投てき消火以外に、水割り消火(バケツ1杯の水にアンプル1本を混ぜることで消火薬剤の量を増やす【ただし、この場合の長期保存は不可!】)としても利用できるようなので、火元の状況を見ながら臨機応変に対応することができます。

※ すべての製品が水割り消火できるとは限らないので、必ず取扱い方法を確認してください。





コレだけは押える!投げる消火器の落とし穴

投げる消火器の欠点『サット119』のような投げるタイプの消火器は、腕力や握力の弱い方でも十分に持ち運べる(取り扱える)大きさ・重さになっています。

また、この手の消火具は使い方が非常に簡単(火元に向かって投げ入れるだけ)という利点がありますが、必ずしもいいこと尽くめの製品というわけではなさそうです。

そこで、一般的な噴射式消火器と比較した場合、どのような点で劣るのか、いくつか例を挙げておきましょう。
  • 片手で取り扱える分、1本当たりの消火能力は小さい!
    (例 …『サット119』の場合、5本で普通火災消火器1本の消火能力と同等)
  • 火元に向かって離れた場所から投げ込むため、コントロールが悪いとうまく消火できない!
  • 1ボトルあたりの消火能力を考慮すると、普通火災消火器に比べて費用が高い!
  • 製品にもよるが、B(油)・C(電気)火災には適さないものもある!
    (最近はB・C火災に対応している製品も販売されている)
このように、投げるタイプの消火器には欠点がありますが、老若男女問わず手軽に扱える簡便さを考慮すると、非常に優れた製品と考えられます。

また、噴射式の消火器などに比べると、廃棄処分の仕方も簡単で、破裂の危険もないので、高齢者や体の不自由な方がいる場合などは、特に検討してみる価値のある消化グッズと言えるかもしれません。

※ 製品によって処分方法は異なってきますが、『サット119』の場合は、消火液をそのまま下水に流すことができます(容器は家庭ゴミとして処分OK!)

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