現在の科学的知見からは交通機関が麻痺してしまうような大地震を予測することはほぼ不可能であり、あなたが、いつどこで災害に遭うかは誰にもわかりません。
もし仮にマグニチュード7クラス以上の直下型地震が首都圏を襲った場合、大勢の帰宅困難者が発生することが予想されますが、そんな自宅に帰れない帰宅困難者対策の一環として、都道府県や市町村が公共施設、企業などと一緒に取り組んでいる徒歩帰宅を支援するための施設が災害時帰宅支援ステーション≠ナす。
\ | 公共 交通機関 |
その他 (車、徒歩等) |
合計 |
東京 | 3,400,000人 | 480,000人 | 3,900,000人 |
埼玉 | 310,000人 | 360,000人 | 670,000人 |
千葉 | 350,000人 | 470,000人 | 820,000人 |
神奈川 | 730,000人 | 390,000人 | 1,100,000人 |
合計 | 4,800,000人 | 1,700,000人 | 6,500,000人 |
\ | 公共 交通機関 |
その他 (車、徒歩等) |
合計 |
東京 | 42,000人 | 31,000人 | 73,000人 |
埼玉 | 5,400人 | 14,000人 | 19,000人 |
千葉 | 8,100人 | 23,000人 | 31,000人 |
神奈川 | 14,000人 | 22,000人 | 36,000人 |
合計 | 70,000人 | 90,000人 | 160,000人 |
※ 平成17年に中央防災会議の専門調査会が行なった被害想定(東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生した場合)
同支援サービスは、阪神大震災(平成7年)を教訓に平成17年に関西広域連携協議会(関西2府5県3政令市を代表)がコンビニや外食系企業と協定を結んで事業をスタートさせましたが、現在は関東や東海エリアをはじめ、ほぼ全国に帰宅困難者を支援するための災害時帰宅支援ステーションが設置されています。
※補足:災害時帰宅支援ステーションの取り組みは、全国43都道府県で実施(平成29年12月現在)
帰宅支援ステーションは、既存の公共施設や店舗が災害時に開設しますが、例えば9都県市の場合、支援対策に賛同し協定を結んでいる店舗は、利用者の見やすい位置(入り口など)に下記のようなステッカーを貼っています。
※9都県市:東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、相模原市
なお、コンビニやファミレス、ファーストフードなどの店舗では、上記のような統一ロゴマークの黄色いステッカー(通称:キタクちゃんマーク)を使用しますが、ガソリンスタンドなどに貼られているステッカーは地域(都道府県)によって異なる【参考:下記画像】ようです。
帰宅困難者対策として都道府県と協定を結ぶ企業は、年々、増えていますが、参考までに関東エリアの9都県市、関西エリアの2府6県4政令市と提携している主な協力事業者を下記表にまとめておきます。
コンビニ等 | キュウズマート、コミュニティ・ストア、サークルK、スリーエフデイリーヤマザキ、ファミリーマート、ミニストップ、ローソン、ニューヤマザキデイリーストア、ローソンマート、くらしハウス、ココストア、生活彩家、サンクス、スリーエイト、セブン-イレブン、ナチュラルローソン、ポプラ、ローソンストア100 |
ファーストフード等 | カレーハウスCoCo壱番屋、タリーズコーヒー、ミスタードーナツ、モスバーガー、吉野家、らーめん食堂かかし、パスタ・デ・ココ、麺屋ここいち、山田うどん |
ファミレス等 | 味の民芸、シェーキーズ、デニーズ、ロイヤルホスト、和食さと、カウボーイ家族 |
居酒屋等 | 魚鮮水産、坐和民、はな(花)の舞、わたみん家、薩摩魚鮮、さかなや道場、和民、升屋 |
カラオケ等 | カラオケ館、祭一丁&ビッグエコー、シダックス、カラオケの鉄人、カラオケルーム歌広場、カラオケ歌うんだ村、ビッグエコー、パセラ、JOYSOUND、カラオケバンバン、カラオケマック、カラオケ本舗まねきねこ |
その他 | ナポリの窯、オートバックス、ストロベリーコーンズ、スーパーオートバックス |
※補足:これまでに協定した9都県市域内の店舗数は24,000店以上(平成29年12月現在)
コンビニ | 国分グローサーズチェーン株式会社、株式会社セブン−イレブン・ジャパン、山崎製パン株式会社、株式会社ファミリーマート、株式会社ポプラ、ミニストップ株式会社、株式会社ローソン |
外食 | 味の民芸フードサービス株式会社、株式会社壱番屋、株式会社イデアプラス、株式会社サガミチェーン、サトレストランシステムズ株式会社、株式会社ストロベリーコーンズ、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ、株式会社ダスキン(ミスタードーナツ)、チムニー株式会社、株式会社モスフードサービス、株式会社吉野家、ロイヤルホールディングス株式会社、ワタミ株式会社 |
その他 | 株式会社オートバックスセブン、株式会社スギ薬局、株式会社第一興商、株式会社ユタカファーマシー |
※補足:2府6県4政令市(京都府、大阪府、滋賀県、兵庫県、和歌山県、徳島県、三重県、奈良県、京都市、大阪市、堺市、神戸市)平成28年7月末現在(登録店舗数:11,092店舗)
ステッカーが貼られた店舗では、帰宅困難者に対して、主に次のようなサポートをしてくれます。
※補足:帰宅支援ステーションを開設するかどうかは店舗管理者が判断(開設時には、のぼり旗を店舗の目立つ場所に掲げるところもある)
水道水 | 店舗によっては、紙コップやマグカップなどを用意して水道水の提供を行う(なお、コンビニなどで水道水が提供できない場合、必ずしもペットボトルなどの商品を無料で提供する義務はないため、各事業者や店舗の判断に従ってください) |
トイレ | 帰宅困難者に対してトイレを提供する |
情報 | 地図やラジオ等で知り得た道路状況や交通機関の運行などに関する情報を提供する |
休憩場所 | ガソリンスタンドやファミレス、カラオケボックスなどでは、帰宅困難者に店舗の一部(サービスルームなど)を一時的な休憩場所として提供するケースもある。 |
ただし、状況(火災・倒壊などの危険があり、安全の確保ができない / 経営者や従業員自身が被災により、帰宅困難者に対して十分な対応ができない…など)によっては営業を休止し、帰宅支援ステーションとしてサービスを提供できないケースもります(災害発生時は支援よりも従業員の帰宅を優先するようになっている)。
ある民間調査会社の推計によると、東日本大震災の時は、首都圏でも自宅に帰ることができなかった人は約300万人にのぼったというデータがありますが、東京が被災していないにもかかわらず、これだけの帰宅困難者が発生します。
大地震が発生したら、まず何よりも身の安全を確保することが大事なので、交通機関が麻痺した時はあらゆる情報ツールを駆使して被害状況や交通情報を把握し冷静に行動すべきですが、国は自宅が20km以上離れている場合は一晩で帰れないとして、むやみに移動しないようにと呼びかけています。
帰宅可能 | 帰宅までの距離が10km以内 |
1km毎に10%減 | 帰宅までの距離が10〜20km |
帰宅困難 | 帰宅までの距離が20km以上 |
※参考:首都直下型地震対策専門調査会
特に日没後の移動は視界が悪く、余震による建物の倒壊や落下物、集団パニックなどにより、二次災害のリスクが高まるため、暗くなってからの移動は危険です。
また、帰宅困難者が一斉に帰ろうと道路や歩道に溢れると、警察や消防が現場に向かえず、救助・救命活動にも支障をきたすため、状況によっては会社などに泊まるという判断も必要です。