1995年(平成7年)に発生した阪神・淡路大震災以降、地震保険に加入する家庭は徐々に増えているようですが、日本が世界一の地震国であるということを考慮すると、地震保険への加入率は、まだまだ低いという印象を受けます。
しかし、地震保険の仕組みや補償内容を知らずに、安易に契約してしまうと「こんなはずじゃなかった!」と、後悔することにもなりかねないので、まずは地震保険とはいったいどんな保険制度なのかを理解しておくことが大切です。
世帯数 | 契約件数 | 世帯加入率 | |
1994年 | 44,235,735 | 3,968,835 | 9.0% |
1995年 | 44,830,961 | 5,181,407 | 11.6% |
世帯数 | 契約件数 | 世帯加入率 | |
2010年 | 53,783,435 | 12,747,680 | 23.7% |
2011年 | 54,171,475 | 14,088,665 | 26.0% |
2012年 | 55,577,563 | 15,050,169 | 27.1% |
2013年 | 55,952,365 | 15,601,783 | 27.9% |
2014年 | 56,412,140 | 16,234,325 | 28.8% |
2015年 | 56,950,757 | 16,809,257 | 29.5% |
参考:損害保険料率算出機構
地震保険とは何かについて入る前に、まずは保険制度が始まった経緯についてザッと触れておきましょう。
気象庁が公表している資料※によると、世界中で発生した大地震のうち、約20%が日本周辺で起こっているというデータがありますが、これは、日本という国が4枚のプレートがぶつかり合う世界でも珍しい島国であることが大きく影響しています。
※ 1990年〜2009年に発生したマグニチュード6以上の地震を基に日本損害保険協会が作成したデータ。
そのため、明治以降、大地震が起こるたびに、何かしらの補償制度が必要なのではないかとの意見も少なからず上がっていましたが、損害の規模などを考えると、中々、実現しなかった・・・というのが現状のようです。
ところが、1964年に発生した新潟地震【M7.5】によって、多大な被害を目の当たりにした政府は、改めて被災者の生活ができるだけ早期に安定するよう何らかの対策が必要だと感じたため、この震災を契機に2年後の1966年、地震保険に関する法律(いわゆる、地震保険法)を制定し、日本における地震保険制度がスタートすることとなりました。
これまで私たちが繰り返し経験してきた地震の被害状況を振り返ってみればわかるように、ひとたび大地震が起こると、その被害は甚大で、地震保険によって損害を補償するとなると多額の資金が必要になってきます。
そのため、地震の規模によっては、その保険金も莫大な額になるため、民間の損害保険会社だけでは支払いきれない場合も出てきますが、それではなんのために創設した保険制度なのか分からなくなってしまいます。
そこで、巨額な損害を伴う大地震が発生しても、契約者に保険金が支払われるよう、地震保険は民間と政府が共同で運営することになっています。
契約者 ●●保険会社 日本地震再保険株式会社 損害保険会社が共同出資して設立した会社。各損害保険会社に納められた保険料のうち、純保険料がこの会社に集まってくる。 政府 日本地震再保険株式会社を通じて保険料の一部を受け取った政府は災害時の準備金として積み立てる。 |
政府 日本地震再保険株式会社 ●●保険会社 契約者 |
このように、地震保険は国が大きくかかわる仕組みになっていることから、巨額な損失を伴う大災害時(仮に関東大震災クラスの大地震が発生しても、十分な補償ができるといわれています)においても、保険金が契約者に確実に支払われる公共性の高い保険制度になっています。
地震を原因とした損害に対する補償は、一般的な火災保険は対象外なので、地震保険に加入していなければ保険金は支払われません。
しかし、ここで注意しなければならないことは、家屋や家財が地震による損害を被ったからと言って、必ずしも、あなたが満足するような保険金が支払われるとは限らない!ということです。
そこで、地震保険に加入する前に、最低限、理解しておきたいポイントについてザッとまとめておきます。
地震保険とは、文字通り、地震を原因とした損害(地震保険の契約対象となるものは建物と家財に限る)に対して保険金が支払われる保険制度のことですが、正確には地震や噴火、またはこれらによる津波を原因とした損害を補償する保険制度≠フことです。
そのため、噴火による溶岩や火山灰等が原因で家屋や家財が焼失した場合などにも、保険金が支払われることになります。
しかし、ここでしっかりと理解しておきたいことは、受け取ることのできる保険金額は損害の割合に応じて変わってくる!ということです。
地震によって家屋が倒壊 地震による火災が原因で家屋(家財)が焼失 地震によって大津波が発生し、家屋が流された |
具体的には、下記に示す一覧表のように「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4区分に分類され、それぞれ支払われる保険金額は大きく変わってきます。
※補足:2017年1月に損害区分が、これまでの3区分(全損・半損・一部損)から4区分(全損・大半損・小半損・一部損)へと変更されている点に注意が必要!
区分 | 損害状況 |
支払われる保険金額 | |
全損 | 建物 | 建物の主要構造部である軸組(柱、はり等)、基礎、屋根、外壁等の損害の額が、その建物の時価額の50%以上になった場合、または焼失あるいは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上になった場合 | 契約金額の100% |
家財 | 家財の損害額が家財の時価額の80%以上になった場合 | ||
大半損 | 建物 | 建物の土台や柱、壁、屋根などの主要構造部の損害額が時価の40%〜50%未満、焼失もしくは流失してしまった部分の床面積が、その建物の延床面積の50%〜70%未満になった場合 | 契約金額の 60% |
家財 | 家財の損害額が家財の時価額の60%〜80%未満になった場合 | ||
小半損 | 建物 | 土台や柱、壁、屋根などの主要構造部の損害額が時価の20%〜40%未満、焼失もしくは流失してしまった部分の床面積が、その建物の延床面積の20%〜50%未満になった場合 | 契約金額の 30% |
家財 | 家財の損害額が家財の時価額の30%〜60%未満になった場合 | ||
一部損 | 建物 | 建物の主要構造部である軸組(柱、はり等)、基礎、屋根、外壁等の損害の額が、その建物の時価額の3%〜20%未満になった場合 床上浸水あるいは地面から45cmを超える浸水の損害を被った場合 |
契約金額の5% |
家財 | 家財の損害額が家財の時価額の10%〜30%未満になった場合 |
参考:損害保険料率算出機構HPより
この支払基準に従うと、たとえば、建物の柱や屋根に損害はなかったものの、塀や門扉が壊れてしまった…といったケースにおいては、建物の主要構造部に損害があるわけではないため、地震保険による保険金は下りないということになります。
地震保険に加入するには、火災保険とセットで契約しなければなりません。
つまり、地震保険単独での加入(契約)は認められていないということです。
※ 既に火災保険には入っているが、地震保険は契約していないという方も、契約途中から地震保険に入ることは可能なので、加入希望者は契約中の損害保険会社等に相談してみましょう。
また、地震保険に加入する際の契約金額は、火災保険の契約金額の30〜50%の範囲内で設定(任意)しなければならないというルールがあるということも押えておきましょう。
火災保険の契約金額が建物1,000万円、家財500万円の場合 地震保険の契約金額の範囲は建物:300〜500万円 / 家財:150〜250万円 |
なお、地震保険の契約金額には上限があるため、建物で5,000万円、家財については1,000万円まどとなっています。