ひとくちに消火器といっても、使用している薬剤の種類によって、いくつか分類することができます。
たとえば、一般住宅では、主に粉末(リン酸塩類|炭酸水素ナトリウムなど)や強化液(炭酸カリウムなどを水に溶かした水溶液)タイプの消火器を設置する家庭が多いかと思われますが、一般家庭以外では、CO2を薬剤とする二酸化炭素消火器を設置している設備も少なくありません。
そこで、二酸化炭素消火器は、いったいどのような火災に対して効果を発揮する消火器なのか、その辺りの基礎知識についてまとめておきます。
二酸化炭素消火器とは、読んで字のごとく、ボンベの容器内に二酸化炭素(CO2)を圧入したガス系消火器のことです。
つまり、二酸化炭素を薬剤として使っているため、その消火原理は主に窒息作用ということになります。
そのため、粉末や強化液タイプの消火器とは違い、薬剤が周囲に飛び散らず、沈下後の損害が小さくて済むといった利点が挙げられますが、他にも次のような特徴が挙げられます。
ガス系の薬剤なので、消火後の汚損が少なく(放出後、気化するため)、粉末などでは入り込みにくい細部にまでとどいて消化する! 非導電性の気体であり、電気絶縁性に優れているため、感電の心配がない! 不活性ガスのため、他の物質(金属や電気機器など)と化学反応を起こしにくい! 経年による変質がほとんどなく、長期にわたって安定したガスなので維持管理が容易! |
以上のような利点から、二酸化炭素消火器は、主に精密機械の多い通信機室や美術館、博物館のような施設で利用(設置)されています。
ガス系消火器は、粉末系消火器や水系消火器などとは違い、薬剤による汚損が少ないという点において、非常に魅力的な一面をもっているため、一般家庭でも使用したいと考える人もいるかと思われますが、二酸化炭素消火器には、下記に示すようなリスクや欠点があるということも肝に銘じておかなければなりません。
放射する消火剤は人体に有害なガスなので、多量の二酸化炭素を吸い込んでしまうと酸欠状態になる(つまり、窒息死の危険がある!) 高熱の消火物に対しては、再燃の恐れがある! 容器内には液化した二酸化炭素が入っているため、ボンベ本体が非常に重い! |
ちなみに、窒息性を有する二酸化炭素系消火器は、酸欠事故防止のため、法令により、原則、地下街などには設置できないことになっています。
また、粉末系消火器などと比較すると、二酸化炭素消火器には次のような違いが見られます。
火災腫別 | 着火物 | 二酸化炭素消火器 《ガス系》 |
ABC粉末消火器 《粉末系》 |
強化液消火器(霧状) 《水系》 |
A (普通) |
木製品等 | × | ○ | ○ |
紙、繊維製品等 | × | △ | ○ | |
布団類 | × | △ | ○ | |
ゴム、セルロイド類 | × | △ | ○ | |
合成樹脂類 | ○ | ○ | ○ | |
B (油) |
引火性油類等(ガソリン等) | ○ | ◎ | ○ |
動植物油類(天ぷら油等) | × | ○ | ◎ | |
砿物油類(灯油等) | ○ | ○ | ○ | |
C (電気) |
電線被膜(通電中) | ◎ | ○ | ○ |
◎:非常によく消火ができるもの
○:消火できるもの
△:完全に消火できないが、火災を仰制できるもの
×:消火できないもの
それぞれの消火器の特徴を比較してみると、一般家庭で起こりうる火災に対しては、どうやら二酸化炭素消火器よりも粉末系消火器や水系消火器の方が適していると言えそうです。
二酸化炭素消火器のホース先端部をよく見ると、一般家庭で設置している住宅用消火器とは形状が少し違っていることに気付きます。
これは、二酸化炭素がノズルから放射される際、液体から気体へと変わりますが、その際の冷気による凍傷を防ぐための措置です。