来るべき災害に備えて、食料を備蓄しているという方も多いかと思われますが、大半の家庭では、おそらく長期保存が可能な非常食をまとめ買いして、納戸やクローゼットなどの空きスペース押し込んでいるのではないでしょうか。
ところが、最近、従来のこの方法に代わるローリングストック法≠ニ呼ばれる新たな備蓄法が注目され始めているようです。
そこで、ローリングストック法とは何なのか・・・!?
その特徴や推奨される理由(背景)、ローリングストック法ならではの欠点についても少し触れてみたいと思います。
ローリングストック法(ロースト法)という備蓄法が、テレビや雑誌などの各メディアで広く注目されるようになったのは、2013年春頃のことです。
日頃の防災に役立つ知識や情報にスポットを当てながら、解りやすく紹介しているNHKの『そなえる防災』などでも取り上げられたこともあるので、ネーミングくらいはなんとなく聞き覚えがあるという方もいるかもしれませんが、実は国※も推奨している備蓄法のひとつです。
※内閣府の防災情報ページ(できることから始めよう!防災対策:第3回)にて紹介。
そもそも、ローリングストックというネーミングは、転がす(回転)という意味の「rolling(ローリング)」と、蓄えるという意味の「stock(ストック)」という2つの単語を組み合わせた言葉で、非常食を定期的に消費(食べる)しては、その都度、買い足す先入先出法(古いものから順に処分)の原理に基づいた備蓄法のことです。
では、いったいなぜ、このような備蓄法が注目され始めたのかというと、この点は特に東日本大震災の影響が大きいかと思われますが、従来の防災対策におけるこれまでの常識(考え方)が通用しないケースが出始めてきたからです。
これまでは災害発生後、2〜3日もあれば、公的な支援物資は現地(被災地)に届くだろうという考えに基づき、備蓄食は3日分も用意しておけば十分というのが常識(一般的)でしたが、東日本大震災のような非常に広範囲に甚大な被害が及ぶような大災害に襲われると、3日どころか、ヘタをすると1週間以上、救援物資が届かない恐れがあります。
近い将来、発生する確率が高いとされる南海トラフ巨大地震や首都直下型地震(マグニチュード7クラス)などの大災害を考慮すると、従来の常識では不十分なのでは?という懸念から、非常食のあり方も見直そうという動きがあり、このような新たな備蓄方法が提唱されているのです。
ではここで、ローリングストック法の備蓄方法が、いまひとつよくわからないという方のために、図表等を使って説明しましょう!
家族の人数×4日分の食料(3食)を備蓄 | ||
消費した備蓄食を新たに買い足す | 定期的に備蓄食を食べる | |
※4日分の食料を備蓄し、1ヵ月に1食分づつ食べ続けると、ちょうど1年で備蓄した食料がすべて入れ替わる |
人によって、若干、蓄え方や消費の仕方に違いが見られますが、これがローリングストック法の基本的な考え方となります。
備蓄食は、なるべく直ぐに取り出せる(目の届く)場所に保管! 押入れやクローゼットの奥など、直ぐに取り出せない(気付かない)ような場所にストックしておくと、忘れたり取り出すのが面倒くさくなってしまう恐れがある… 賞味期限は1年程度あれば十分! 消費サイクル(1ヵ月に2度など)を上げれば半年程度の賞味期限でもOK。3〜5年程度の長期保存可能な非常食にこだわる必要がないため、レトルト食品やフリーズドライ食品、パックご飯、カップ麺、缶詰など、選択肢の幅も広がる。 ストックする備蓄食の種類はあまり増やし過ぎない! あれもこれもと数を増やすと、結局、買い足しや賞味期限のチェックが煩わしくなる… 備蓄食が口に合わなかった場合は、次回のストックから外し、新たな食料を買い足す! 実際に食べて試食を繰り返すことで、結果的に、より食べやすい食料だけが残る!毎月●日は家族そろって、夕飯に非常食を食べるなどと計画しておくと、防災意識も高まり、継続しやすい。 調理器具を備える! 調理(火・水など)が必要な食料をストックする場合は、カセットコンロやボンベ、水なども併せて準備! |
普段の生活で日常的によく使う食料品や日用品をはじめとした衣食住に必要な品を、いつもより少し余分に買い足し、ストックしておくことで、いざというときの非常事態に対処するというローリングストック法には、主に次のようなメリットがあります。
食べ慣れた食料がストックできるため、口に合わないといったリスクを回避できる! 一般的に長期保存可能な非常食は、価格も高く、一度も食べたことがない味のわからないものを備蓄するため、いざという時に口にしてみると、美味しくない(好みじゃない)といった不安が残る。その点、ロースト法では備蓄食の味に関する心配はない。 定期的に消費していくため、賞味期限切れによるうっかりミスを防ぐことができる! 非常用として販売されている食品の多くは、年単位(概ね3〜5年程度)での長期保存が可能なため、一度購入したら、そのままほったらかしという家庭も少なくない。そのため、備蓄していたことをすっかり忘れてしまい、必要な時にはすでに賞味期限がだいぶ過ぎており、食べていいものか不安になることも… 賞味期限をそれほど意識する必要がないため、備蓄食の選択肢の幅が広がる! 一昔前に比べれば、非常食の種類は驚くほど増え、味に関しても、個人的にはかなり向上していると思うが、あくまで非常食としては美味しいというレベルの商品も少なくないというのが正直な感想(非常食の味に関しては、当サイトの食レポコーナーをどうぞ!)。ロースト法では賞味期限の長さ(6ヵ月〜1年がひとつの目安)をそれほど気にする必要がないため、自分の口に合う食品が見つけやすい。 |
近年、防災のスペシャリストや関連企業などが、盛ん(?)に提唱しているローリングストック法ですが、必ずしも万人に有効な備蓄法であるとは限りません。
保管場所のスペースが増える! ロースト法は、普段、食べ慣れている食品を少し多めに購入しておく備蓄法なので、ストック量が多くなる傾向にあり、家族構成や家屋によっては、保管場所に困ることも… 調理器具や器の備えが必要! 非常用として販売されている備蓄食は、調理を必要としない(あるいは、調理が簡単)ものが多いため、特に調理器具などがなくても困らないが、ロースト法では、特に非常用目的で販売していない食品も多く含まれてくるため、調理(水や加熱処理など)しなければ食べられない(食べにくい)ものも…。そのため、備蓄した食品の種類によっては、調理器具や食べるための器などの備えも必須になってくる。 日頃、レトルト食品や缶詰、カップ麺などはほとんど食べない人には不向き! そもそも、日頃、レトルト食品やカップ麺などは滅多に口にしない(あるいは、嫌い)人にとっては、ロースト法そのものの考え方が適さない。むしろ、賞味期限が短い分、交換の煩わしさや、賞味期限切れのリスクが高くなってしまう。 |
家庭における備蓄法を、ローリングストック法に切り替えたがために、かえって管理が煩わしくなったというケースも考えられるため、ロースト法を実践するかどうかは、家族の性格やライフスタイルを加味した上で、検討することが大切です。