糖分には、一時的とはいえ、疲れをとってくれる疲労回復効果や精神面における安定効果が期待できるため、主食とは別に手軽に摂取できる甘い食べ物をセットで備蓄しておくとよいという話はよく聞きます。
具体的には、チョコレートやキャラメル、飴などがいい例ですが、今回は長期保存可能な缶入りドロップ、つまり、非常用として販売されている飴≠ノスポットを当ててみました。
缶入りドロップと聞くと、名作『火垂るの墓』のイメージがあまりにも強過ぎて、肌身離さず大切に持っていた節子のあの顔や仕草を連想してしまという人は、おそらく私だけではないはずです。
今回、試食する非常食は、そんなジブリ作品にもたびたび登場する佐久間製菓の『サクマ式ドロップス』ですが、実はこの缶入りドロップには『サクマドロップス』という類似商品があることをご存じでしょうか。
※補足情報:佐久間製菓の『サクマ式ドロップス』は、ジブリ映画のおかげ(?)で若い世代にも広く知られるようになりましたが、実は原作の短編小説には、単に「ドロップ缶」と書かれているだけで「サクマ式ドロップス」とは明記されていません。
『サクマ式ドロップス』と『サクマドロップ』・・・
一見、商品名を略しただけのようにも見えますが、『サクマ式ドロップス』と『サクマドロップス』は、同じ缶入りドロップとはいえ、実は製造者が異なる別の会社の商品なのです。
では、いったいなぜ、消費者を混乱させるような紛らわしいネーミングの商品が存在するのかというと、その背景には次のような経緯があります。
元々は、1908年(明治41年)に創業した1つの会社であったが、太平洋戦争中、砂糖の供給がストップしたことで、会社は一度解散してしまう。ところが、終戦後、元会社の社長の息子と、当時、番頭の立場にあった横倉信之助氏が、それぞれ同名の会社を設立したため、裁判に発展。その結果、社長の息子の会社は、サクマ製菓を名乗り『サクマドロップス』という商品名のドロップ缶を販売、一方、旧番頭の会社は、佐久間製菓として『サクマ式ドロップス』のドロップ缶を販売することで落ち着いた。 |
つまり、簡単にまとめると、裁判によって、戦前の社名である「サクマ製菓株式會社」は社長の息子の会社が継承し、登録商標(商品名)は旧番頭が継承することになった…というわけです。
話が少し逸れてしまいましたが、とりあえず押さえておいてほしいことは、今回、試食する缶入りドロップは、佐久間製菓の『サクマ式ドロップス』だということです。
その点をご理解していただいたうえで、さっそく本題に入りましょう!
まずは容器チェックから・・・
通常タイプの『サクマ式ドロップス』は、赤と白を基調とした、どこか懐かしさを感じるレトロな雰囲気が印象的ですが、非常用のドロップ缶は、白地に赤で商品名がプリントされているだけの、いかにも非常食らしいシンプルなデザインに仕上がっています。
缶底には賞味期限が記載されており、製造日から常温で5年間の保存が可能です(以前は3年間となっていたので、どうやら賞味期限は延長したらしい…)。
通常タイプのドロップ缶の賞味期限は約1年間とのことなので、5倍の長期保存が可能な非常用缶入りドロップは、まさに保存向けのキャンディーといって間違いなさそうです。
ちなみに、非常用缶入りドロップは、通常タイプのドロップ缶よりも内容量は多め(170g)で、容器を含めた総重量を計測してみたところ、231gを示していました。
一方、缶裏面には原材料名や製造者、原材料に含まれるアレルギー物質(食品衛生法に基づく27品目)、栄養成分表などの商品に関する基本情報が記載されています。
缶蓋に貼り付いているシールは、一度剥がすと「開封済」という文字が残る特殊加工シールで、なかなか凝った作りに感心しますが、それよりも何より、とにかく蓋が固い!
素手で蓋をこじ開けるのは、かなり無理があると思った方が良いかもしれません(下手に爪を引っかけ無理やり開けようとすると、爪を剥がしてしまう恐れもあるので要注意!)。
それくらい固い蓋なので、缶入りドロップを備蓄する際は、あらかじめ10円硬貨やマイナスドライバーなどの小道具も用意しておきたいところです。
なお、蓋の縁は誤って指で擦っても、スパッと切れない程度のバリ取りしてあるようで、絶対に怪我をしないという保証はありませんが、怪我をしにくい加工処理はしてあります。
佐久間製菓の『サクマ式ドロップス』には、8種類のフレーバーが楽しめる飴が入っていますが、ドロップ缶の容器側面に記載されていた注意書きによると、必ずしも全種類のフレーバーが均等に入っているわけではないようです。
そこで、非常用ドロップ缶、1缶(170g)当たりに、いったい何粒の飴が入っているのかをチェックするため、容器内の飴をすべて器に移し替えてみました。
ドロップ缶には、長期保存食によく見られる脱酸素剤は特に入っていませんでしたが、1缶当たり59粒(大きく欠けていた飴は2粒)の飴が入っており、各フレーバーの個数も思いのほか偏りがあることが分かりました。
りんご(10粒)レモン(6粒)カカオ(7粒)ハッカ(4粒)パイナップル(6粒)ぶどう(8粒)オレンジ(8粒)いちご(10粒) |
また、1粒1粒、飴の形(デザイン)も異なり、コロッとした丸いものもあれば、卵のような楕円形、ひし形といったように、見た目で楽しませてくれる飴に仕上がっている点は評価したいところです。
前項で説明したとおり、現在、販売されている『サクマ式ドロップス』は、カカオ味、ぶどう味、いちご味、パイナップル味、オレンジ味、レモン味、りんご味、ハッカ味の8種類の味が楽しめます。
気になる味の方はというと、砂糖入りの飴なので、当然、甘いことは甘いのですが、カカオ味(カカオマスを原料に使っているため、チョコ味ということもできそうですが、実際に食べた個人的な感想を言わせてもらうと、チョコ味というよりは、ココア味と表現した方がしっくりとくる)を除くと、どのフレーバーも適度な酸味があり、しつこい甘っとろさを感じさせない、甘酸っぱいさっぱりとした、誰が口にしても食べやすい味わいに仕上がっているような気がします(まあ、どれも普通の飴で、あまりコメントのしようがありません…)。
以上、非常用の『サクマ式ドロップス』について、ザッとまとめてみましたが、ここで1点気になることがあります。
それは、通常タイプの缶入りドロップと味は違うのか?ということです。
本当なら、食べ比べるのが一番良いのですが、今回は通常タイプの『サクマ式ドロップ』をうっかり買い忘れてしまい、食べ比べることができませんでした。
そこで、佐久間製菓鰍フ本社に直接問合せてみました。
Q:通常タイプの缶入りドロップと味は違うのか? |
A:通常タイプと保存用のドロップ缶に入っている飴の味やフレーバーの種類に違いはございません。ただし、保存用の缶入りドロップには、通常タイプには入っていないビタミンcを配合しております(つまり、ビタミンCの有無以外、味やフレーバーの種類に違いはないということらしい…)。 |
Q:食べずに5年間保管しても、飴同士がくっつくことはないのか? |
A:保管場所にもよりますが、普通に常温保存する分には、特に問題ございません(絶対にくっ付かないという言葉を持ちだすことは最後までなかったため、高温の場所に長期缶放置していた場合は、ある程度、溶けてだまになってしまうリスクはありそう…)。 |
ちなみに、『サクマドロップス』を販売するサクマ製菓でも、防災用に長期保存可能なプラスティックボトルタイプの『サクマドロップ』を販売しています。
賞味期限は5年間と同じですが、容器やフレーバーの種類が若干異なってくるので、どちらの飴が自分好みか、一度、食べ比べてみるのも良いかもしれません。
蓋がとにかく固い! 容器が缶詰なので、カラカラとうるさい! ハッカ味とりんご味の飴の色(微妙に違うが…)が似ていて紛らわしい! 飽きのこない形と味で、老若男女問わず食べやすいシンプルな飴に仕上がっている! いつでもどこでも食べたい時に手軽に糖分(ビタミンC、クエン酸も!)補給ができる! |