あなたは災害救援ベンダー≠ニいうものをご存じでしょうか?
地震は前触れなくやってくるので、いつ、どこで起こるかわかりません。
まだ記憶に新しい東北地方太平洋沖地震(いわゆる、東日本大震災)は、平日の午後2時46分という時間帯に発生したため、街は大勢の帰宅困難者で溢れかえりました。
※参考:内閣府が公表したインターネット調査によると、災害当日、自宅に戻れなかった帰宅困難者は首都圏で500万人以上。
交通機関が麻痺し、徒歩以外に移動手段がないような大災害に見舞われると、歩いてでも自宅に帰るべきか・・・それとも、会社や近くの宿泊施設に留まり様子をみるべきかの選択肢を迫られることがありますが、どちらにせよ、帰宅困難者を支援するサービスが、冒頭で問いかけた災害救援ベンダーです。
では、災害救援ベンダーとは、具体的にどんなサポートをしてくれるサービスなのか、知っておくと災害時に役立つ(かもしれない)知識について、少しまとめておきましょう。
災害救援ベンダーとは、一言で言ってしまえば、無料で飲める自動販売機のことですが、もちろん誰でもボタンを押すだけで、好きな時に飲料がいくらでも取り出せる夢のような自販機というわけではありません。
あくまで有事の際に利用できる企業の社会貢献を目的としたサービスのひとつなので、通常の自販機と変わらない機能も併せ持っており、平時はお金を払わなければ飲料を飲むことはできない仕組みになっています。
では、有事の際に活躍する災害救援型の自販機は、いったいどのような仕組み(方法)で供給するのかというと、その方法は大きく2タイプに分かれます。
ひとつは遠隔操作タイプで、もうひとつは専用キータイプです。
それぞれのタイプの特徴については、下記表を参考にしていただければと思いますが、どちらにも利点・欠点があるので、一概にどちらの自販機の方が優れていると断言することはできません。
\ | 遠隔操作タイプ | 専用キータイプ |
利点 | 管理者を置く必要がないため、人手がかからず、状況に応じていつでも飲料を提供することができる! | 管理者がいるため、飲料を公平に分配することができる! |
欠点 | 早い者勝ちの恐れがあるため、一部の者が独占してしまう恐れがある… | 管理者不在の場合は、飲料を提供することができない… |
主な特徴 | ・手回し発電型の自販機もある ・バッテリーを搭載せず、専用キーで外扉を開けて、直接、飲料を取り出すタイプの自販機もある ・内臓バッテリーの持続時間は48時間程度 ・商品搬出を最優先するため、災害モード時は冷却加温装置や蛍光灯は作動しない自販機が多い ・自販機内にストックできる飲料本数は最大で500〜700本(250ml)程度 ・災害状況を伝えるメッセージボード(電光掲示板)搭載の自販機もある ・災害支援型の自販機には、下記に示すようなステッカーやロゴ表示がある(メーカーによって異なる) |
有事の際に飲料が無料で提供できる自販機の設置を国内で最初(2003年)に始めたのはコカ・コーラ社ですが、現在、災害支援型の自販機を取り扱っている飲料メーカーは複数あります。
飲料の供給方法は自販機によって異なってくるため、必ずしも同じような仕組み(手順)とは限りませんが、災害時に活躍する災害救援ベンダーは、概ね次のような流れで飲料の無料提供を行います。
極端な話し、国内すべての自販機を災害救援ベンダーに置き換えてしまうことが最も理想的な形なのかもしれませんが、一般社団法人日本自動販売機工業会の調査によると、国内に点在する清涼飲料自販機の設置台数は約220万台(2014年末時点)にも上るため、現実的ではありません。
また、災害救援ベンダーは各飲料メーカーが社会貢献活動の一環(自販機のイメージアップも含む)として始めたサービスなので、社会貢献するにも限度があります。
そのため、災害救援ベンダーの数は徐々に増えてはいるものの、その数は少なく、まだ一度もお目にかかったことがないという方もいるのではないでしょうか。
では、いったいどんな場所にあるのか・・・?
自販機の設置場所はメーカーの設置基準によって異なってくるので、必ずしも●●に行けば置いてある!とは断言できませんが、基本的に飲料の無料供給という役割や公共性の高さから、各メーカーは主に人が多く集まるエリアを中心に設置を進めているようです。
つまり、具体的には、学校や病院、市役所、体育館、図書館、公園、集合マンション…といった場所(施設)が挙げられます。
また、かつてはバッテリーの搭載場所が天面ということもあって、設置場所は屋内に限られていたこともありましたが、近年はバッテリー内蔵の自販機が登場したことで、屋内はもちろん、屋外にも設置可能な自販機も増えているため、今後は屋内屋外問わず目にする機会が増えるかと思われます。
しかし、自販機の種類(供給方法)によっては、管理者以外の者でも簡単にフリーベント(無料で飲料を取り出す)できてしまう自販機もあるため、中には屋内に設置することを条件(いたずら防止)とした自販機もあります。
以上、災害救援ベンダーについてザッとに説明してきましたが、良い機会なので災害救済型の自販機を導入している飲料メーカーに直接問合せ、いくつか質問してみました。
そこで、最後に大手飲料メーカーサントリーとの質疑応答の内容を簡単にまとめておきます(真摯に対応していただいた担当者T様に、この場を借りて、心よりお礼申し上げます)。
Q:現在、国内にあるサントリー社製災害救援ベンダーの設置台数はどれくらい? |
A:弊社が提供している災害救援ベンダーの設置台数は、現在、約16,000台ほどで、年々、増加傾向にあります。※参考:コカ・コーラ社の設置台数は約6,000台(2011年12月末時点) |
Q:個人・法人問わず、災害救援ベンダーは誰でも設置できるの?また、設置場所に制限はある? |
A:弊社では特に法人に限定しているわけではないので、交渉次第では個人でも設置することは可能です。また、設置場所に関しても、特に制限しておりませんので、必ずしも公共施設周辺に限定して設置するなどといった条件は設けておりません。※参考:協定を締結した自治体などに限定するメーカーもあります。 |
Q:災害時、飲料を無料提供するかどうかの判断は誰がするの? |
A:弊社と管理者様との間で交わした契約内容に基づいて判断いたしますので、無料提供の判断はケース・バイ・ケースとなります。※参考:サントリーに限らず、自販機の管理者と結んだ協定(契約)内容に基づいて、災害モードの有無を決めるメーカーがほとんどです。 |
Q:無料提供した飲料代金は誰が負担するの? |
A:無料提供した飲料代金の負担を弊社がするか、それとも管理者様がするかは、契約内容によって変わってくるため、一概にどちらが負担するとは断言できません。※参考:災害モード時の飲料コストは、メーカー側が負担するという会社もあります。 |
Q:災害モードに切り替わった自販機に行けば、誰でもその場で直ぐに飲料を貰えるの? |
A:契約内容によって変わってくるため、災害モード時は、その内容に従って提供されることになります。※参考:自販機の供給方法などにもよりますが、誰でもその場で飲料を取り出すことができるサービスを提供している飲料メーカーもあれば、自治体などに引き渡すケースもあるようです。 |