今回、試食する非常食は、永谷園の『あたためなくてもおいしいカレー(甘口)』です。
当食レポでも、以前、似たようなレトルトカレー【食レポ60:LLヒートレスカレー】を取り上げたことがありますが、最近は長期間保存可能な非常時向けのレトルトカレーの開発に力を入れているメーカーも増えているようです。
商品の種類が増えれば増えるほど、選択肢の幅が広がるため、これはウマい!あれは不味かった!と比較することができるようになり、消費者にとっては歓迎すべきことですが、品数が増えれば、それだけ迷います。
そこで、永谷園の『あたためなくてもおいしいカレー』は、温め直さなくても本当に美味しいのか?
前に試食したハウス食品のLLヒートレスカレーと比較しつつ、味や非常食としての機能を評価してみたいと思います。
永谷園が2003年9月に発売した長期保存可能なレトルトカレーが『あたためなくてもおいしいカレー』です。
ご覧のとおり、同品は化粧箱入りなので、試食する前に、まずはパッケージチェックからしてみましょう。
『あたためなくてもおいしいカレー』には辛さレベルがあり、甘口と中辛の2種類から好みの辛さを選ぶことができますが、今回、私がチョイスした辛さレベルは甘口≠ナす(ちなみに『LLヒートレスカレー』に辛さレベルはなく、商品は1種類のみ)。
カレーは甘口じゃなきゃ私は食べられない!というわけではありませんが、同品には甘口があるということなので、今回はお子様でも食べられそうな辛さレベルをあえて選択してみました。
賞味期限は製造日から常温で3年間、備蓄食料という点を考慮すると、個人的には日付をもう少し大きな文字ではっきりと表記してほしいところです(ちなみに、LLヒートレスカレーの賞味期限は5年間)。
また、パッケージを見ると、エー・ラベルというロゴが記載されていますが、これは永谷園のブランド名らしく、食物アレルギー体質の方にも配慮した商品とのことです。
※エー・ラベルとは「卵・乳・小麦・そば・落花生・大豆」と「香料・着色料・化学調味料」を使用せずに作った永谷園の商品ブランド。
パッケージ側面には1袋あたりの栄養成分表が記載されているので、食事療法が欠かせないような持病(糖尿病など)のある方にとっては有難い情報といえるでしょう。
一方、パッケージ裏面には原材料名や調理方法、注意事項などの基本情報に加え、食品衛生法で表示が義務付けられているアレルギー物質27品目の使用の有無が分かりやすく記載されています。
この辺は、さすが食物アレルギー体質の方に配慮した食品であることが伝わってきますが、この表によると豚肉にチェックが入っているため、どうやら27品目すべての物質が不使用というわけではなさそうです。
せっかく食物アレルギーに配慮したカレーをウリにするのであれば、中途半端に豚肉を入れるよりも、思い切って27品目不使用の野菜カレーにしてしまった方が良いのではと思ってしまうのは私だけでしょうか・・・
常温でも美味しく食べられ、かつ、食物アレルギーに配慮したカレーというだけあって、温め直してから食べることを前提とした一般的なレトルトカレーに比べると、『あたためなくてもおいしいカレー』の原材料名欄に記載されている内容には何点か大きな特徴がみられます。
たとえば、パーム油。
通常、レトルトカレーには味にコクを出したり、ソースのとろみ付けにラードを使用しますが、常温だと油脂が固まってしまう動物性油脂に代えて、同品ではパーム油を使っているようです(この点は『LLヒートレスカレー』も同じ)。
また、アレルギー物質に該当する小麦の代わりにホワイトソルガム粉を使っているのも特徴のひとつといえるでしょう。
さらに、甘口ということもあって、ガラムマサラ(←辛み目的で使われる香辛料というよりは、香り付けが目的のミックススパイス)以外の香辛料は記載されていません。
パッケージに目を通していくと、調理方法についての説明がありますが、そのままでも美味しくいただけると書かれているものの、温めて食べることも可能なようで、その場合は他の一般的なレトルトカレーなどと同じ調理方法で温め直すことになります。
さて、化粧箱から取り出したレトルト食品がこちらになります。
長期保存(3年間)可能な食品ということで、おそらくパウチ袋も、それなりに密封力に優れた特殊フィルムが使われていると思われますが、アルファ米のようにスタンドパック式の袋であれば、別個に容器を用意する必要もないので、より災害時向けの非常食になるような気がします(まあ、カレーなので食べづらいとは思いますが…)。
パウチ袋を開封した直後の中身がこちら【上記画像:右下】です。
先ほど説明したように、ラードに変えて脂の分離しにくいパーム油を使用しているため、ご覧のとおり、常温でも油の分離はまったくといっていいほど見られません。
今回は白飯も用意してみたので、常温のルーをそのまま器によそったご飯の上に流しかけてカレーライスを作ってみました。
文字どおり、温め直す必要のないレトルト食品なので、永谷園の『あたためなくてもおいしいカレー(甘口)』は、これで完成です!
永谷園の長期保存可能なレトルト食品『あたためなくてもおいしいカレー(甘口)』を、商品名どおり、温めずにそのまま(常温)お皿に盛り付けたカレーライスがこちらです。
ご覧のとおり、ソースは常温のままでも脂が分離して浮いているということもないため、画像からでは温め直してから食べるタイプのレトルトカレーとまったく区別がつきません。
ソースは黄色みがかったやや明るめの色をしており、香りの方も一般的な市販のレトルトカレーと大差ない特有の匂いを漂わせています。
また、一晩寝かせたようなしっかりとしたとろみを持ったソースの中には、思いのほかゴロゴロと具材が入っているようで、どちらかというと具沢山カレーと表現していいのではないでしょうか。
パッケージに記載されていた原材料を見る限り、使用している具材の方は、ジャガイモ、人参、玉ねぎ、豚肉の計4品目という王道のカレーですが、玉ねぎに関しては、どうやらソースに溶け込んでしまっているようで、固形物はほとんど確認できませんでした。
具材は、どれも1cm角にカットされており、豚肉よりも人参とジャガイモの量が圧倒的に多いというのも特徴といえるでしょう。
さて、気になる味や食感ですが、人参に関しては残念ながら柔らかくほとんど歯ごたえというものがありません。
一方、ジャガイモは思っていたよりもホクホクしているため、人参に比べると多少歯ごたえの良い食感を楽しめます。
豚肉に関しては、堅くしまっており、かつ、パサついた食感なので、柔らかさやジューシーさなど微塵もありませんが、この点は市販の一般的なレトルトカレーにも当てはまるので、想像どおりといったところでしょうか。
この点を踏まえると、同品は豚肉が入ってなくても特に気にならないカレーなので、やはり豚肉を外して野菜カレーにしてしまった方がよいのではないかという気持ちがより一層強くなります。
では、ソースの味はどうか?
甘口ということで、辛さという点に関しては、舌にスパイスの刺激を感じるようなことはまったくなく、味そのものの、いい意味で普通のレトルトカレーと遜色ないような気がします。
また、分離した脂が口の中でザラつくといったこともないので、抵抗なく箸(スプーン)が進みますが、植物性油脂を使用している分、あっさりとした軽い口当たりのソースに仕上がっているため、カレーは辛さやコクが命!という方には、かなり物足りないソースといえるでしょう。
とはいえ、『あたためなくてもおいしいカレー』の甘口は、カレーの風味や香りがしっかりと感じられるので、カレーの王子さまのような糖分の多いカレーとは違い、カレーを食べているという実感は十分にあります。
そのため、香辛料の効いたヒリヒリする刺激が苦手だというお子様でも、抵抗なく食べられる甘口カレーではないでしょうか。
最後に『あたためなくてもおいしいカレー(甘口)』を完食した上で、気付いた点や特長をまとめておくので、災害時用備蓄食を検討されている方は少し参考にしてみてください。
化粧箱入りなので、積み重ねて保管することができ、商品も探しやすい!(側面にも商品名が記載されているため) アレルゲンフリー非常食は、まだまだ品数が少ないので、食物アレルギー体質の方には有難い! 甘口は香辛料の使用が抑えてあるため、辛くないカレーとして子供でも食べやすい! 長期保存が可能だが、製造日から3年間と賞味期限の長さが、やや中途半端に感じられる… |