今回、試食する非常食は生命のぱん あんしんです。
前に試食レポで紹介したアキモトのパン缶レーズン味【試食レポB】などと同様、缶詰入りの保存パンですが、この『生命のパン あんしん』が、アキモトのパン缶と大きく異なる点は、賞味期限の長さとパンの形状にあります。
パンの形状については、これから述べる試食レポ内で画像を交えながら説明させていただきますが、賞味期限に関しては、アキモトのパン缶よりもさらに2年ほど長い5年間となっており、定期的に期限切れをチェックするのが面倒だという賞味期限重視の方にとっては、なんとも魅力的な保存パンに見えるかもしれません。
※補足:パンの缶詰とえいばアキモトと言われるくらい有名なパン・アキモトさんのHPには、日本の食品缶メーカーの保証が概ね3年と言われているのに、賞味期限5年保証を語る商品は、いったい何を基準に5年と設定しているのか疑問であると言っています。私は専門家でもないので、軽率なことは言えませんが、こういう主張があるということも知っておいてください。
しかし、一方で賞味期限よりも、パンそのものの味や食感などを重視する方にとっては、単に賞味期限が長いというだけでは、購買意欲はあまりわかないのではないでしょうか。
そこで、『生命のパン あんしん』シリーズは非常食としてどうなんだろう?と少なからず気になっている方は、この食レポを少し参考にした上で検討してみてはいかがでしょうか。
2014年4月現在、『生命のパン あんしん』は、プチヴェール、オレンジ、黒豆、ココア、ホワイトチョコ&ストロベリーの5種類の味が用意されているようですが、私の手元には全種類の味が揃っているわけではないので、今日はプチヴェール味を食べてみたいと思います。
そもそもプチヴェールってどんな味なの?…と、疑問を持たれた方も多いかと思われますが、プチヴェールとは、ケールと芽キャベツを交配して作った、ビタミンAやビタミンC、カルシウムや鉄分などを豊富に含む栄養価の高い野菜なんだそうです。
あまり聞き慣れないネーミングではありますが、ここは食レポがメインなので、プチヴェールとは、要は野菜の一種だということを知っておく程度でよいのではないでしょうか。
さて、この『生命のパン あんしん』プチヴェール味ですが、側面のラベルに書かれている表記を見ると、販売元はアンシンク株式会社となっていますが、製造者は北海道にある「あすなろパン」という知的障がい者施設で作っているようです。
※補足:あすなろパンを運営する社会福祉法人 江差福祉会のサイトによると、この施設は江差町内唯一のパン工場が閉鎖(平成11年)されたことにより、当法人がそのパン工場を職員共々引き継ぎ、障害者の生きがい作業とし通所作業所をスタートしたとのこと。
また、開缶時にはやや大きな音がするという警告文も見られますが、いったいどれくらい大きな音がするのか・・・
小心者の私としては、このような注意書きがなされていると、かえって心配になってしまいます。
『生命のパン あんしん』に使われている缶詰は、そのサイズや形状はアキモトのパン缶とほぼ同じと見て間違いなさそうですが、異なる部分がいくつか見られるので、その違いを簡単にまとめておきましょう。
まず、プラスチック製のクリアキャップ付きであるということ。
これなら、食べかけのパンはもちろん、ちょっとした食べかけの食料なども一緒に缶詰に入れて保管することができるので、ある意味ありがたいパーツです。
また、プルトップ式のフタをよ〜く見ると、中央部に点字表示のシールが貼りつけてあります。
私は点字が読めないので内容はわかりませんが、『生命のパン あんしん』の製造者が障がい者施設であるからこその配慮といえるでしょう。
ただ、一方で缶底に記載されている賞味期限の文字や数字が見づらく感じたので、個人的には、この点の改良をお願いしたいところです。
では、さっそく中身を拝見してみましょう。
カキッ!という、少々甲高い音が響きましたが、周囲の人が驚いてビクッ!とするほど大きな音ではありません(かといって、決して小さな音というわけでもありませんが…)。
フタを切り外して中身を覗いてみると、パンと缶詰の間には結構な隙間があるので、パンが一回り小さく見えますが、どうやらパンが逆さまに入っているようです。
アキモトのパン缶は、缶詰とパンとの間にすき間などなく、ギュッと詰まっていたので、その辺はだいぶ違います。
とりあえず、隙間があるので親指と人差し指で挟んで取り出してみましたが、出てきたパンは2つ(秤で計ってみたところ、1個の重さは50gなので、重さ的にはアキモトのパン缶と変わらない)。
見た目はカップケーキ状のマフィンのようにも見えますが、缶詰にはソフトなパンと書いてあるので、ソフトパンなのでしょう。
2つに分かれているという点も、アキモトのパン缶とはまただいぶ違ったパンであることが分かりますが、考え方によっては、最初から分け合って食べる(あるいは、体の小さなお子さんや、ちょっと小腹がすいたときなど)には食べやすいサイズともいえます。
また、よく見ると、この『生命のパン あんしん』には脱酸素剤が入っていませんが、これは「幼児に危険な脱酸素剤及び防腐剤等は一切使用しておりません」との記載が缶詰の側面に書かれていました。
脱酸素剤や防腐剤を使わないに越したことはないと思いますが、使用せずに、しかも5年間という長期保存できるというのはいったいどんな仕掛けがあるのでしょうか・・・?
個人的にはその仕組みに興味があります。
パンには薄紙が巻きついているので、切れ目の部分からクルクルっと剥がしてしまいましょう。
ほとんど抵抗なく取れるはずです(パン底面にも薄紙が貼り付いているので、剥がし忘れのないように!)。
ちなみに、薄紙を剥がした状態のパンを様々な角度から撮ってみた画像が、こちらです。
特に焼き立てパンのような香ばしい匂いはしてきません。
見た目は、上部がきつね色に焼けたごく普通のパンであり、缶詰に表記されているようなソフトなパンといった印象はあまりありなく、どちらかというと少ししまった感じの硬めのパンのように見えます。
ちなみに、手に取っていろいろと触ってみたところ、パッサパサに乾燥しているというわけではありませんが、しっとりしていると表現できるほどの滑らかさや湿り気はなく、手がべたつくようなこともありません。
また、先に少し硬めに感じると言いましたが、特に側面はゴツゴツとしており、硬くしまった感触が強いように思えます。
本当に、これはソフトパンなのでしょうか・・・
仮に『生命のパン あんしん』がソフトパンだとしても、アキモトのソフトパンとは、かなり違った意味のソフトパンと言えそうです。
では、プチヴェール味の内部がどうなっているか、ナイフで切ってみることにします。
その断面図が、こちらです。
どの切り口も気泡が小さく隙間もあまりないので、アキモトのソフトパンとは明らかに違い、やはりどうしてもパンそのものが硬そうな印象を受けてしまいます。
試しに、上下左右あらゆる方向から指で押してみましたが、あまりパンの形は変形しません。
また、断面をよく見ると、少しくすんだ黄色っぽい色をしています。
これは、原材料にプチヴェールという野菜を使用していることが少なからず影響しているのでしょうか。
そのへんはよく分かりませんが、いずれにせよ、見た目はそれほど美味しそうには見えなかった…というのが正直な感想です。
それでは、いよいよ『生命のパン あんしん』プチヴェール味を試食してみます。
見た目とは少し違って、意外にもしっとりとした舌触りです。
正確には、口に入れた最初の一噛みは、ボソボソッとした感じが舌に残りますが、唾液によってしっとりとしてくるため、パサつき感は直ぐに解消されます。
また、甘み(その甘さもしつこくない)も十分にあるため、特にジャムなどを塗らなくても、そのままで十分イケます。
それも、噛めば噛むほど甘さが増してくるような・・・そんな甘さです。
このプチヴェール味を食べた人の中には、野菜特有の青臭さが気になって好きではないという人もいるようですが、私が食べたところでは、そのような野菜臭さというか青臭さは特に感じなかったので、抵抗なく完食することができました。
しかし、プチヴェール味を食べた方の中には、青臭い匂いが気になったという口コミが意外と多いので、野菜嫌いで青臭さが特に苦手だという方は避けるか、あるいは、実際に一度食べてみた方が良さそうです。
さて、『生命のパン あんしん』プチヴェール味を完食した上で、あらためて思うことは、いったいどのへんがソフトパンなのだろうかということです。
見た目や食感、どちらもハードとは言わないまでも、私の目にはどう見てもソフトなパンには見えません。
ということは、プチヴェールの甘さがソフトな口当たりということで、ソフトパンということなのでしょうか。
いずれにしても、フカフカな柔らかいパンの食感を求めているなら、迷わずアキモトのパン缶の方をお勧めします。
最後に『生命のパン あんしん』も、とりあえず味の変化を見るため、温めてみましたが、結果は予想どおり。
フカフカ感、サクサク感は間違いなくアップするので、災害時には難しいかもしれませんが、賞味期限間近のパン缶を食す際には、温めて食べてみるのもよさそうです。