今回、試食する非常食は、主に嚥下機能の低下した高齢者や要介護者などを対象としたおかゆ≠ナす。
おかゆの非常食といえば、以前、尾西の梅がゆ【食レポ58】やまつやのライスるん【食レポ65】を取りあげましたが、お湯や水を注ぐタイプのアルファ米系のおかゆは、どうしても味や食感が自分の口に合わず、食べる気がしないという方もいるのではないでしょうか。
あくまで非常時に食べる食事なのだから、わがまま言うな!と言ってしまえばそれまでですが、避難生活では食事が一番の楽しみだという被災経験者の話をよく聞きます。
とくれば、アルファ米よりもおいしいおかゆ≠ェあれば、そちらを優先的に備蓄したいと考える人も少なからずいるはずです。
そこで、今回はアルファ米とは異なる長期保存可能なおかゆを購入してみたので、味や食感に違いは見られるのか・・・
自分の舌で確かめてみたいと思います。
LLF(ロングライフフーズ)とは、常温での長期保存を可能とした技術(新含気製法)を使った非常食のことで、東京に本社を置く株式会社LLC(ロングライフ・コーポレーション)が製造販売しています。
※ 新含気製法とは?… 原材料を下処理、前処理後、4層のアルミパウチに入れ、窒素ガス置換包装後、最小限の加圧加熱殺菌により、素材の風味・食感を損なわず、常温で長期保存を可能にした製法のこと。
貝LCは平成23年に設立した新会社なので、商品名はおろか、社名すら聞いたことがないという方も多いかと思われますが、主力商品のLLFはシーリーズ化されており、白粥の他にも梅粥や鮭粥、豚汁、肉じゃが、きんぴらごぼうといった主食・惣菜類を商品化し、いずれも栄養バランスを考えたメニューになっているようです。
ちなみに、アルファフーズ株式会社の美味しい防災食シリーズ【食レポ24・47】も、似たような技術(こちらはUAA製法となっていますが、説明を読む限り、素人には似たような技術にしかみえない…)を使ったレトルト系長期保存食を販売しているので、興味のある方は、そちらの記事もみてらもらいたいところですが、LLFシリーズは美味しい防災食シリーズよりも、賞味期限がさらに1年ほど長い約6年間(正確には6年4か月)というのが魅力のひとつです。
それでは、前置きはこのくらいにして、さっそく本題に入りましょう!
まずは、恒例のパッケージチェックから・・・
単品で購入すると、市販の一般的なレトルトカレーにみられるような化粧箱(厚紙)には入っていないようです。
4隅の角を丸くするなど、薄手の買い物袋などに入れて持ち運ぶ際、破れたりしないよう細かい配慮がしてある点は◎ですが、個人的に気になったのは下記に挙げる2点。
賞味期限の記載箇所(裏面下部)が分かりづらい! 一般的なアルファ米商品と同じように、スタンドパック式の袋を採用したり、スプーンなどがセットになっていると、より非常食向けのような気がする! |
また、LLFの白粥は、お米が水分を含んでいる分、乾燥したアルファ米のお粥商品に比べると、どうしても重たくなってしまうので、携帯性で比較すると、アルファ米の方が優れているといえるでしょう(尾西の白がゆは40gなので、LLFの白粥(内容量:230g)の重さは実に5倍以上!)。
しかし、LLFの白粥は調理済みなので、アルファ米のように調理に必要な水やお湯を別に用意する必要はなく、いつでも食べたいときに直ぐにたべることができるため、この辺は非常食を備蓄する人が、どの点に価値を置くかで評価が変わってきそうです。
さて、アルファ米の非常食なら、パッケージチェック後、調理に取り掛かるところですが、LLFシリーズの非常食は、何ひとつ調理する必要がありません(パッケージに目を通すと、一般的な市販レトルト食品と同様、電子レンジや熱湯で温め直して食べることも、もちろんできますが…)。
そこで、まずは常温の味を確かめるため、温めずに開封した白粥を、そのまま器に移し替えてみました。
器に移し替えた常温のLLFの白粥がこちらになります。
特に化学調味料などは使用していないようなので、鼻を近づけても不自然な香りはせず、ほぼ無臭です。
また、アルファ米のように水分を吸収した乾燥米がふやけて、まるで見た目がベビーフードのような代物になることもなく、やや控えめなとろみを帯びた乳白色の汁気の底には柔らかくなった米粒がしっかりと確認できます。
気になる味の方はというと、噛めば噛むほどお米の自然な甘みがほんのりと口の中に広がり、さらに、自分が想像していたよりも十分な塩気が感じられるため、白粥ではあるものの、特にオカズがなくても食べられる程度の味が付いています(もちろん、あくまで白粥としての味付けにしては、という意味ですが…)。
また、食感もアルファ米特有の芯が残っているような不自然なざらつきやポソポソ感もないので、とても食べやすく、いい意味で普通のお粥を食べている気持ちにさせてくれます。
したがって、味に関しては、アルファ米とは比べ物にならないほど美味しい!というのが素直な感想です。
では、温め直したらどうか…!?
LLFは常温でも美味しく頂けるというのがウリですが、お粥はやっぱり温かい方が美味しい!と思っている方は多いはずです。
災害の規模によっては、電気やガスが使えない状況も十分考えられますが、無事、何事もなく、賞味期限が迫る非常食を処理する時のことも考え、今回は温め直して食べてみる実験もしています。
あくまで個人的な感想ではありますが、結論から言ってしまうと、LLFの白粥も、やはり常温より温め直した方が食べやすく、心持ち甘みも増しているように思えます。
とはいえ、明らかに味が変化し、常温よりも格段に美味しくなったというものでもないので、この辺は人それぞれとしか言いようがありません。
LLFシリーズの非常食は、常温で製造から6年以上もの長期間保存が可能ですが、一般的なアルファ米商品も5年程度(おススメはしませんが、賞味期限切れのアルファ米も食べたことはある)保存がきくようになっているので、賞味期限に関しては両者に圧倒的な差はみられません。
しかし、調理が不要なこと、味や食感に関しては、アルファ米で作るお粥よりもお米の甘みや食感が良いことなどを踏まえると、美味しさや手間要らずで選ぶなら、LLFのようなお粥は検討する価値がありそうです。
一方、アルファ米にはアルファ米ならではのメリットがあります。
つまり、備蓄する非常食は、味よりも携帯性≠竍コスト(LLFの白粥はアルファ米よりも1.5倍程度高い!)≠重視するというのであれば、安価なアルファ米のお粥で十分のような気もするので、備蓄する前に、まずは一度試食してみることをおススメします。
\ | LLF | アルファ米 |
利点 | 直ぐに食べられる美味しい | メジャー商品の大半は食器類が不要軽いので携帯に便利LLFに比べると価格は安い |
欠点 | 器やスプーンが必要アルファ米に比べると重量がある価格が高い | 水(お湯)が必要調理時間がかかるアルファ米特有の味がする |